「タバコ病」と呼ばれる代表疾患

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

かつては慢性肺気腫、慢性気管支炎と別々の肺疾患として分けられていました。その後、2つの疾患ともにタバコ等有害な物質を吸入することが原因であること、また慢性肺気腫(喫煙等がきっかけの長期間の肺の炎症で肺がスカスカになるなどして機能低下が起きている状態)の患者さまは慢性気管支炎(咳や痰が出やすくなる)を併発しやすく、その逆も同様ということから厳密に2つの病気を区別することが難しいということが後に判明しました。そのことから現在はどちらの状態であっても慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断されるようになりました。

先にも述べましたが、発症原因の大半は喫煙(化学物質の吸入が原因になることもあります)です。これによって気管支に慢性的な炎症が起き、気管支の粘膜や壁が肥厚化するなどして気道が細くなって呼吸がしにくくなることがあります。また炎症によって肺実質がスカスカになっていくと息が吐きにくくなるなどします。

主な症状は風邪が原因でもないのに咳や痰がずっと続く、少しの動作でも息苦しく感じる、体重が減少するなどです。さらに病気が進行すると安静にしていても息切れしてしまうこともあります。

治療をする場合ですが、肺の状態を元に戻すことはできません。その目的はこれ以上悪化させないようにすることです。まず喫煙されている方は禁煙をしていきます。そのうえで呼吸機能をできるだけ改善していけるように気管支を拡張する薬や炎症を抑える薬を使用する薬物療法になります。また呼吸器リハビリテーション(呼吸訓練、腹筋や胸襟、腕、足を鍛える 等の運動療法 など)も併せて行います。なお安静時も息切れがあり、呼吸不全に該当する場合には在宅酸素療法が適応となります。条件を満たす場合には、身体障害者福祉法による指定医として、呼吸器機能障害認定申請をさせて頂きます。

禁煙外来も行います

当院は現在喫煙中で禁煙をしたいと考えている方を対象に禁煙治療を行っています。この禁煙治療については、以下で挙げる条件を患者さまが満たしていると医師が判断した場合、保険適用となります。なお保険適用外になったとしても全額自己負担とはなりますが、治療そのものは受けられます。保険適用条件につきましては、以下をご参照ください。

  • 速やかに禁煙を実践したいという意志がある
  • ニコチン依存症であると問診票で診断されている、ニコチン依存症に関係するスクリーニングテスト(TDS)が5点以上
  • ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上となっている(35歳以上)
  • 禁煙治療を受けることに関して文書で同意している

治療期間は12週間

禁煙治療に関しては12週間の期間で行うとされ、その間に5回通院することになります。医師による診察の結果、必要と判断した場合に禁煙治療が行われます。同治療は貼付薬タイプのニコチンパッチ(ニコチネル)と錠剤タイプのバレニクリン(チャンピックス)の2つがありますが、バレニクリンの欠品状況が現時点で続いているので現在はニコチンパッチ(ニコチネル)による治療のみとなります。

ニコチンパッチとは

パッチとは貼付薬のことで、主にニコチン成分が含まれています。これを体のある部分に貼り付けることで、ニコチンを皮膚から吸収するようになります。同パッチの使用によって、タバコを止めたことで起きるとされるニコチン切れの症状(イライラ、落ち着きがない 等)は抑えられるようになります。この(ニコチン)吸収の量を徐々に減らし、最終的にはパッチをしない状態に持っていきます。

治療開始時は喫煙を止めた状態でニコチンパッチを起床時に背中等の部位に貼り付けていきます。パッチは夜寝る前に剥がします。これを6週間使用していきます。7週目に入る際にニコチンの含有量が半分のパッチを使用し、これを2週間貼り続けていきます。ここまで8週間が経過し、9週目からは何も貼らない状態で12週間目まで経過観察を続けます。その後、最後の通院日(5回目)に医師が問題なしと判定すれば禁煙治療は終わりです。

先にも述べたように、このニコチンパッチについては8週間程度貼付することになります。ただ同じ部位に貼り続けると皮膚にかぶれがみられるようになります。そのため、体に貼る位置は毎日変えるようにしてください。