呼吸器内科について

呼吸に関わる器官には上気道(鼻腔、口腔、咽頭、喉頭)、下気道、肺とあり、それぞれの部位や症状に応じた診察、検査、治療を行うのが呼吸器内科です。疾患部位と、その病態に応じて適切な治療を行います。下記の症状に該当する点がございましたら、ご相談ください。日本呼吸器学会認定の呼吸器専門医、指導医として、適切な診療を提供して参ります。

何らかの呼吸器疾患が疑われる場合、必要に応じて、胸部画像検査、肺機能検査、心電図検査、血中酸素飽和度の測定、血液検査、超音波検査などを行います。その結果も踏まえ、総合的に見て診断をつけていきます。なお診察の結果、入院治療や高度な医療機器による検査(CT検査、気管支鏡検査など)や治療が必要と医師が判断した場合は、すみやかに連携協力している総合病院や専門の医療機関と連携させて頂きます。

当診療科でよくみられる患者さまの症状

  • 咳がなかなか止まらない
  • 痰がよく絡む
  • 血が混じった痰が出る(血痰)
  • 声がかれている(嗄声)
  • 呼吸が苦しい
  • 呼吸をすると痛みがある
  • 呼吸音が「ゼーゼー」「ヒューヒュー」する(喘鳴)
  • いびきがうるさいと指摘を受けた
  • 夜間に息が止まっていると指摘をうけた
  • 日中の活動時に眠気がみられる など

呼吸器内科で扱う主な疾患

  • 気管支炎
  • ぜんそく(気管支ぜんそく)
  • 肺気腫/COPD(慢性閉塞性肺疾患)
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 慢性気管支炎
  • 肺炎
  • 非結核性抗酸菌症
  • 肺結核
  • 咽頭炎
  • 扁桃腺炎
  • 肺がん
  • アレルギー性鼻炎
  • 花粉症
  • 気胸 など

ぜんそく

気管支ぜんそくとも呼ばれます。空気の通り道である気道(気管)に何らかの原因で炎症が起き、腫れるなどして気管支の空気の通り道が狭くなっていきます。その状態が続けば呼吸がしにくくなっていき「ヒューヒュー、ゼーゼー」といった呼吸音(喘鳴)が聞かれるようになるほか、敏感な状態にもなっているので少しの刺激で咳が止まらなくなります(ぜんそく発作)。この発作がひどくなると呼吸が停止することもあります。原因としてはアレルギー(ハウスダストなどのアレルゲン)が大半とされていますが、激しい運動、ストレス、喫煙、風邪などをきっかけにぜんそく発作が起きることもあります。
当院は呼吸器クリニックとして、大学病院と同レベルの喘息関連検査を備えております。一般的な肺機能検査の他に、末梢気道の狭窄を検出できるモストグラフや呼気NO測定検査を備えております。診断のみならず、治療効果の判定にも使用して参ります。
治療に関してですが、ぜんそく発作が起きている場合は気管支拡張薬や痰切り薬(去痰薬)を使用していきます。またぜんそく発作が起きないようにするためには、継続治療をすることが何より重要です。慢性的な炎症を抑制する治療として、吸入薬(気管支拡張薬・吸入ステロイド薬)を使用していきます。このほか、原因のアレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)が判明している場合はそれを避けるための環境づくりも必要です。近年では、免疫治療となる抗体製剤が複数使用できるようになっており、重症の方には使用する場合もあります。

気管支炎

空気の通り道は気道と呼ばれます。気道は咽頭から、気管、気管支へ枝分かれしていきます。気管支に炎症が起きている状態が気管支炎です。よくみられる症状は発熱、咳・痰、鼻水などです。
なお気管支炎は急性と慢性に分類され、急性気管支炎の発症原因の大半はウイルス(コロナウイルス、RSウイルス、アデノウイルス 等)の感染です。この場合、数日程度で気管支炎がみられ、風邪のような症状が現れた後に咳がみられるようになります。一方の慢性気管支炎は気管支の炎症による咳や痰といった呼吸器症状が長期間(数週間から数ヵ月程度)続いている状態を言います。原因としては喫煙や大気汚染といった環境因子だけでなく、気道のアレルギーである副鼻腔気管支症候群や咳喘息があります。その他には百日咳や非結核性抗酸菌症、肺結核などの感染症が原因となっていることもあります。喫煙されている方は禁煙が何よりも重要となります。
治療方針ですが、急性気管支炎では、炎症を起こした気道粘膜が治癒されるのを待ちながら、その間の症状緩和する薬剤(咳止め、痰切り薬 等)を用います。また咳喘息や慢性気管支炎の患者さんでは、気管支拡張薬や炎症を抑えるステロイド薬の吸入薬の治療も重要となります。

非結核性抗酸菌症/MAC症

非結核性抗酸菌症は、非結核性抗酸菌という細菌によって起こる感染症です。
非結核性抗酸菌は土壌や水系などの自然環境、水道や貯水槽などの給水システム、家畜などに広く生息しています。ヒトに感染する菌は約30種類程度が知られていますが、それらのうち約90%を占めるのは、Mycobacterium avium(マイコバクテリウム・アビウム)とMycobacterium intracellulare(マイコバクテリウム・イントラセルラー)という菌です。この2つはまとめてMAC(マック=Mycobacterium avium complex)と呼ばれ、MAC菌による呼吸器感染症のことを肺MAC症といいます。
菌を含んだ埃(ほこり)や水滴を吸い込むことにより感染すると考えられており、ヒトからヒトへ感染することはありません。2014年の罹患率調査では、推定罹患率が1年に人口10万人あたり約15人と結核を抜き、近年増加してきています。特に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎などの肺疾患がある人の発症が多くみられる一方で、基礎疾患のない中高年女性の発症が増えています。また、発症時から比較的痩せている患者さんが多い傾向にあります。

非結核性抗酸菌症の症状

咳、痰、血痰が比較的多い症状ですが、発熱、全身倦怠感、寝汗などがみられることもあります。一方で、症状がなく、健康診断や人間ドックの胸部X線検査で異常を指摘されて診断に至る人もいます。

非結核性抗酸菌症の検査・診断

非結核性抗酸菌は、前述したように自然環境や給水システムなど身近な所に常に存在する菌(常在菌)です。ありふれているがために、非結核性抗酸菌の感染をはっきり突き止めること(確定診断)は簡単ではありません。胸部の画像検査で、非結核性抗酸菌によると考えられる画像所見を確認することに加え、痰の検査などで菌の感染を確かめることが必要です。痰を採取して培養し、複数回非結核性抗酸菌がみつかれば診断となります。また、血液中のMAC抗体値が上がることがあるため、血液検査が診断の補助として用いられます。

非結核性抗酸菌症の治療法

症状が少なく、画像所見が落ち着いている場合は、経過観察が主体となります。症状が継続したり、画像の悪化が見られる場合には、結核の治療に用いられる薬剤を複数用いた内服治療をさせて頂きます。治療期間については状況によって変わりますが、年単位での内服治療となる場合があります。
生命にかかわる悪化は少ないですが、数年から10年以上と長い年月をかけてゆっくり進行する可能性があり、心にゆとりを持ちながら長く付き合っていく姿勢が大切です。日本結核病学会認定の結核・抗酸菌症認定医として適切な診断治療を行って参ります。

肺炎

肺炎にはウイルス/細菌などによる細菌性肺炎と、免疫反応に伴う肺炎(間質性肺炎)などに大別されます。多くが気管支炎から波及した細菌性肺炎となります。ウイルス感染の場合には自然治癒をまちながら、症状を緩和する治療が主体となります。細菌による肺炎の場合には、抗菌薬による治療をさせて頂きます。
名古屋大学呼吸器内科の肺炎疫学研究に参画し、学位論文をはじめ今までに多数の論文報告を行ってきました。それらの知見も臨床に生かして参ります。日本呼吸器学会、日本感染症学会認定の専門医/指導医として、必要なときに、必要十分な、抗菌薬治療を提供して参ります。

肺結核

結核菌による感染であり、肺を中心とした全身感染がおこる疾患です。感染経路は空気感染、あるいは過去の感染後の再燃です。同菌に感染しても発症しないケースもありますが、よくみられる症状は、咳や痰、微熱、倦怠感などです。息切れや血痰(痰に血が混じる)、胸痛を認める方もいます。発症は、外国籍を中心とする若年患者さんと、免疫力低下疾患や高齢者の患者さんの2群に大別される傾向があります。日本では毎年2万人程度が発症し2,000人ほどの死亡者が出ています。怖いイメージもあるかと思いますが、適切な治療がなされれば完治する疾患であることは重要です。
結核が疑われる患者さまには喀痰検査や採血の抗体検査、血液検査、画像検査を行うなどして診断をつけていきます。検査において、周囲への感染性があると判断される場合は、専門病院への入院治療が必要となります。周囲への感染性がない場合には、通院にて抗結核薬の治療となります。半年以上は薬物治療が続くのですが、治癒を目的に中断せずに治療を受けて頂く必要があります。日本結核病学会認定の結核・抗酸菌症認定医として、適切な診断治療を行って参ります。

新型コロナウイルス感染症

昨今の新型コロナウイルス感染症についても、愛知県で数人しか患者さんがおられなかった2020年2月より診療に従事して参りました。日本で初めて得られた臨床知見についても学会発表して参りました。誰しも免疫がなくなすすべもなかった時代から、普遍的な疾患に移り変わる様は、呼吸器科医、感染症科医としても大変示唆に富む状況でした。パンデミックから得られた知見、治療内容について常にアップデートを重ね、実臨床に展開して参りたいと思います。

肺がん

肺がんには肺で発生する原発性のがんと他の部位から転移するがんの2つのケースがありますが、ここでは原発性肺がんについて説明します。この場合、気管支あるいは一部の肺の細胞からがんが発生するようになります。主に4つのタイプ(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がん)に分類されます。原因に関しては、喫煙がよく言われています。(男性で4倍以上、女性で2倍以上)。喫煙以外では遺伝的要因、アスベスト(石綿)の吸引なども挙げられます。
発症初期では症状は現れにくいので、早期発見の場合は、健康診断を契機に指摘された症例が大半です。当院はレントゲン検査において、AIを活用し肺結節を同定するシステムを導入しております。
がんの早期発見にも貢献したいと思っています。
状況によっては、咳、痰、血痰、息切れ、倦怠感等の精査で発見される場合もあります。
治療に関して、根治的な治療としてはがんを切除する外科的治療(手術療法)が主体となります。手術困難な状態の場合には、進行を抑える目的に化学療法(抗がん剤 等)や放射線療法が選択されます。
勤務医時代には、がん化学療法についての論文報告を行い、積極的にがん治療を行って参りました。
積極的ながん診療については入院病床のある医療機関にご紹介させて頂きますが、症状の緩和につながる治療(緩和治療など)については、がん治療認定医機構認定のがん治療認定医として、できうる限りの応援をさせて頂きます。